八八商会デジタル羅針盤 整理を始める

くわしく知りたい方へ

「どこまで残すか」を
決めるための、判断材料。

やり方だけ知りたい方は、最初のページで十分です。ここから先は、もう一歩踏み込みたい方へ。

封筒と真鍮の鍵とスマートフォンが並んだ机の上

いちばん多い誤解

「引き継いでおけば、
家族が普通に使える」
——なりません。

ここを勘違いしたまま準備すると、やったのに何も解決していない状態になります。 目的によって、進む道がまったく別なのです。

  • 写真やメモが欲しい

    故人アカウント管理連絡先を登録しておく。iCloudに入っている分だけ受け取れます。

    本体は開きません
  • iPhoneを再利用したい

    引き継ぎの申請が完了すると、アクティベーションロックは自動で解除されます。そのうえで初期化して使い直します。

    初期化すると中身は消えます
  • お金の手続きをしたい

    iPhoneは関係ありません。各社の相続窓口に、書面で手続きします。

    口座の場所が要ります
Appleに申請しても、パスコードは解除されません。

ここは期待を持たないでください。書類をそろえて正式に申請しても、 Appleが故人のiPhoneの画面ロックを開けてくれることはありません。 そういう作りになっていて、例外はありません。
ただし、見る手段はあります。

申請が通れば、ご家族はご自分のiPhone、iPad、パソコンのブラウザから、 故人のiCloudにあった写真・動画・メモ・メール・連絡先を、閲覧してダウンロードできます。

故人のiPhoneを開く必要は、そもそもありません。 本体は閉じたままでも、中身は受け取れるということです。

逆に言えば、iCloudに入っていないデータは、どうやっても取り出せません。 本体にしか無い写真は、そこで終わりです。だからこそ、手順1の続き(iCloudに入っているかの確認)が要ります。

左と真ん中は、別々の手続きではなく、順番の問題です。引き継ぎの申請が完了すれば、アクティベーションロックは自動で解除されるので、端末は使い直せる状態になります。ただし使い直すには初期化が必要で、初期化すれば本体の中身は消えます。

「まず中身を受け取る。それから端末を初期化する」——この順番だけは、間違えないでください。

渡せるもの・渡せないもの

何が受け取れて、
何が受け取れないのか。

鍵がかかっているのは端末、引き継げるのはクラウドに保存されたデータ、という対比の図
渡せるもの 写真/ビデオ/メッセージ/メモ/連絡先/カレンダー/メール/バックアップ
渡せないもの 購入した音楽・映画・アプリ/保存されたパスワード(ネット銀行、クレジットカード情報など)/決済情報
  • アクセスできる期間には期限があります。「3年」という数字が広く出回っていますが、Appleの現行のサポートページでは確認できませんでした。いずれにせよ永久には残りません。受け取ったものは早めに手元へ移してください
  • ご家族がAndroidやWindowsでも指定できます。その場合はメッセージで送れないので、紙が唯一の手段になります
  • 指定できるのは13歳以上の方です

受け取る側の流れ

→

ご家族は、こうやって受け取ります

家族がアクセスキーと死亡証明書をそろえて申請し、審査を経て受け取るまでの流れの図

紙を渡された側が、実際に何をするのか。 ここを知っておくと、なぜ紙が要るのかが腑に落ちます。

審査 書類審査を伴う手続きですすぐには通りません。葬儀の連絡には、まず間に合わないと考えてください
  1. ご家族が、自分のiPhoneの設定、またはAppleの申請ページを開く
  2. QRコードを読ませてアクセスキーを入力し、死亡証明書の写真をアップロードする
  3. Appleの審査を待つ(すぐには通りません。書類審査を伴います)
  4. 承認されると、iCloudの写真やメモを見たり、ダウンロードしたりできる
だから、紙とメッセージの両方がおすすめです。

ご家族がiPhoneをお使いなら、登録のときにメッセージで送っておくと、 相手の「設定 › サインインとセキュリティ」に自動で保存されます。 「あのQRコード、どこやったかしら」を防げます。

そのうえで紙も出しておく。相手がiPhoneでない場合や、 メッセージを消してしまった場合の備えになります。

お金のことは、どうなるのか

銀行と証券は、
iPhoneが開かなくても
手続きできます。

金融機関の相続手続きは書面で進むことを示す図

ここは、いちばん心配されるところですが——意外と大丈夫です。

ネット銀行もネット証券も、相続の窓口があります。 戸籍謄本などの書類を出せば、口座は凍結され、残高証明が出て、相続の手続きが進みます。 多くの場合、ログインできる必要も、2段階認証を通す必要もありません。 金融機関は、相続人がログインすることを想定しておらず、書面で処理するのが基本だからです。
※ 必要書類や手順は各社で異なります。具体的なことは、その会社の相続窓口にご確認ください。

本当の問題は、そこではありません。

「どこに口座があるのか、家族が知らない」ことです。

紙の通帳も郵便物も来ないので、存在に気づかれないまま終わります。 手続きができないのではなく、手続きを始められないのです。

だから、手順2で「取引先の名前だけでも書き出す」ことが効きます。 パスワードは不要です。会社名さえ分かれば、あとは家族が窓口に連絡できます。
期限 引き継いだデータには期限があります永久には残りません。受け取ったものは早めにご自分の端末へ移してください

パスワードは、どこに置いてあるかで運命が分かれます

メモ・パスワードアプリ・管理アプリで引き継ぎ方が変わることを示す図

同じ「パスワードを保存している」でも、置き場所によって、家族に渡るか渡らないかが正反対になります。

  • メモアプリに書いている → 渡ります メモはiCloudで同期されるので、引き継ぎの対象です。ご家族は見られます。
    ただし、そのメモにロックをかけている場合は開けません。メモのパスワードは別に必要です。
  • iPhoneの「パスワード」アプリ → 渡りません Safariで自動入力されるあれです。引き継ぎの対象外と、Appleがはっきり定めています。 ネット銀行も証券も、ここに入っていればご家族からは一切見えません。
  • 他社のパスワード管理アプリ → アプリ次第です Bitwarden には「緊急アクセス」という機能があり、信頼する人を指定しておけます(有料プラン)。
    1Password には引き継ぎ専用の機能がありません。ただし家族プランなら家族が復元でき、 「緊急キット」を印刷して保管しておく方法があります。
    お使いのアプリに「緊急アクセス」に相当する機能があるか、一度確認してください。
では、どうするのが現実的か。

メモに全部書くのは、生きている間が危険です。iPhoneを一度覗かれたら、すべて漏れます。
かといって何も残さなければ、ご家族は手も足も出ません。

八八商会がおすすめするのは、この分け方です。

・紙には「どこと取引があるか」だけ(銀行名・証券会社名・取引所名)
・パスワード本体は、緊急アクセス機能のあるアプリに
・そのアプリを使っていることも、紙に書いておく

これなら、紙が盗まれても実害が出ません。それでいて、ご家族は手続きを始められます。

暗号資産(仮想通貨)だけは、話が別です

  • 国内の取引所なら、まだ大丈夫。IDやパスワードが分からなくても、法定相続人として手続きを踏めば対応してもらえます
  • 海外の取引所は、負担が重くなります。外国語でのやり取りが必要になることがあります
  • 自分で管理しているウォレットは、取り戻せません。復元用の言葉(シードフレーズ)が分からなければ、誰にも、Appleにも、取り出せません。永久に失われます
しかも、取り出せなくても相続税はかかり得ます。
「中身は取り出せないのに、税金だけ請求される」という事態が実際に起きています。 暗号資産をお持ちの方は、復元用の言葉をどう残すかを、必ず決めておいてください。 これだけは、他のどの備えとも性質が違います。

※ 八八商会は、相続や税の判断はいたしません。「どこに何があるか」を書き出す作業までをお手伝いします。

紙に、どこまで書くか

結局いちばん確実なのは、
紙に書いて金庫にしまう
ことです。

書いた紙を施錠できる場所にしまうことを示す図

技術がどれだけ進んでも、ここは変わりません。 ただし「書く」と「しまう」は、必ずセットです。 書いただけで机に置いてあるのが、いちばん危ない状態です。

書いておくと、ご家族が助かるもの

  • 最優先 ── これが無いと何も始まりません iPhoneのパスコード(6桁の数字)
    Apple Accountのメールアドレスとパスワード
  • お金に関わるもの ネット銀行・証券のID、パスワード、暗証番号
    暗号資産のウォレット情報・復元用の言葉
    クレジットカード、電子マネー
  • 解約が必要なもの 月額サービスのログイン情報(動画、音楽、通販など)
  • 見落とされがちですが、重要です ふだん使っているメールアドレスのパスワード
    各社からの手続きメールがここに届きます。2段階認証の解除にも要ります。 ここが開けないと、他が全部そろっていても止まります。

書くときの3つの注意

  • 遺言書の本文には書かないでください。 自筆の遺言書は、家庭裁判所での検認という手続きを通ります。 本文に書くと関係者の目に触れます。 「ID・パスワードは別紙参照」とだけ書き、封筒に入れて別添えにしてください。
  • 変えたら、紙も直してください。 いちばん多い失敗が、紙の情報が古いまま放置されることです。 パスワードを変えたのに紙が昔のまま、というのが実際によく起きます。 「変えたら紙も」を習慣にしてください。
  • 隠しすぎないでください。 盗まれては困りますが、見つけてもらえなければ、書いた意味がありません。 金庫に入れて、金庫の鍵の場所だけを家族に伝える。 あるいは、遺言書と一緒に専門家へ預ける。このどちらかが現実的です。

2つのやり方、どちらを選ぶか

  • A:全部、紙に書く

    パスコードもパスワードも書いて、金庫にしまう。
    向いている方:ご自宅に施錠できる場所がある。パスワードをあまり変えない。ご家族が近くにいる。
    いちばん強いやり方です。停電しても、アプリが終了しても、紙は読めます。

    保管を誤ると全部漏れます
  • B:取引先の名前だけ書く

    紙には銀行名・証券会社名だけ。パスワード本体は、緊急アクセス機能のあるアプリに預ける。
    向いている方:人の出入りがある。パスワードを頻繁に変える。ご家族が遠方。
    紙を落としても実害が出ません。

    アプリが使えないと詰みます
迷ったら、AとBの間があります。

iPhoneのパスコードとApple Accountだけ紙に書いて金庫へ。 残りはパスワード管理アプリに。

この2つさえ開けば、ご家族はあとを自力でたどれます。 全部書くより漏れたときの被害が小さく、名前だけより家族が動けます。

※ 遺言書の書き方そのものについては、行政書士など専門家にご相談ください。八八商会は法律の判断をいたしません。

ひとつだけ、注意していただきたいこと

「復旧キー」は、
安易に有効にしないでください。

復旧キーと端末の両方を失うと復旧できなくなることを示す図

デジタル終活の記事でよく「復旧キーを設定しましょう」と書かれています。ですが、これには落とし穴があります。

復旧キーを有効にすると、Appleの通常のアカウント復旧プロセスが使えなくなります。

そのうえで、復旧キーと、信頼できるデバイス(お使いのiPhoneなど)の両方を失うと、Appleでも復旧できません。 サポートに電話しても、Apple Storeに持ち込んでも、どうにもなりません。完全に締め出されます。

復旧キーだけを失くしても、iPhoneが手元にあってサインインできていれば作り直せます。危ないのは「両方いっぺんに」です。 そしてそれは、実際に起こります。機種変更、紛失、故障。そのときに紙が見つからない。

ご高齢の方や、紙をなくしやすい方には、むしろ有効にしないほうが安全だと考えています。

すでに有効になっている場合は、キーが手元にあるか必ず確認してください。
場所:設定 › あなたの名前 › サインインとセキュリティ › 復旧キー

読んでいただき、ありがとうございました。

やり方のページに戻る

ここまでの内容に加えて、ご家族への切り出し方や、 Apple Storeのカウンターでの話を含めた記事を noteに用意しています。

その「残したい」を、届く準備へ。

希望は、決まった。
家族に渡す準備は、
できていますか。

カードに気持ちを残したら、次は設定と保管。
つまずきやすいところを知って、ひとつずつ終わらせましょう。

もしもの時の羅針盤。仕組みを知る、設定する、紙に残す。

読むだけで、終わらせない。

設定から、紙を書いて
家族に伝えるところまで。

Apple Store勤務10年、うちGenius約7年。
カウンターで感じた「生前に準備できていれば」を、3本の記事にまとめました。

全3部 + 印刷して使える記入用紙

noteのマガジン名は「もしもの時の羅針盤」。このサイトの「デジタル羅針盤」と同じ取り組みの、読みもの版です。

3本と付録をnoteで見る

マガジン 980円単品は各500円/3本合計1,500円

あなたの「気になる」から。

知らずにいたことが、
次の一歩になる。

付録のチェックリスト、もしもの時カード、デジタル意思カードのイメージ

白い紙から、考えなくて大丈夫。

読み終えたら、
あなたの1枚を。

チェックリストと記入用紙を、第3部に収録。
書いて、しまって、置き場所を伝える。
そこまで進めるためのマガジンです。

マガジンをnoteで見る

3本セット・記入用紙つき 980円

決めるのは、あなた。
その準備を、ひとつずつ。

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